キョウアイ―狂愛―
(変わらぬ……)
クレアはフッとあきらめのため息を漏らす。
「対峙するいわれがない、だと?
笑わせる……。
よもや我らの血塗られた因縁を忘れた訳ではあるまいな?」
――燃え盛る炎
―――失われゆく同胞の命
―――断末魔の叫び
ここは地獄かと見まごうような光景は未だクレアの胸を締め付ける。
「口うるさい年寄りどもはもういない」
クレアとは違う意識で三十年前の忌まわしい記憶を持つサイファ。
「時代錯誤の風習を引きずる古い頭は、三十年前に、全て、砕いてやったじゃないか!?俺が!!
今は俺が全て!俺達の出生をとやかく言う輩がいれば即刻、切り捨ててやる」
激情を隠そうともしない。
しかし、不審なものを見るかのような、蔑んだクレアの瞳と視線がかち合うと、それは狂おしそうな表情に変わる。
「僕とお前との間に行き交う事の出来ない溝があるのなら……それはお前が引いている……」
雨の音だけが見つめ合う二人の間に響いた。
依然、自分に蔑みの視線を送り続けるクレア。
サイファは自分の女々しい訴えを一人嘲笑った。
―――欲しいものはいつだって手に入らぬ運命
だから権威をかざし、剣を振る。
力で、手中に収めてやる…………どうしようもない運命をねじ曲げてやる、と、誓ったあの日。
……忘れはしない。