キョウアイ―狂愛―




「昨今、巷では盗賊が溢れているらしいじゃないか……。
リドルは今、盗賊の討伐を任されているんだ。


困るよ……汚らわしい奴ら、賤民どもはリドルの屋敷からも持ち去った」




――僕の……僕だけのクレア


サイファは雨に濡れた剣の柄をしっかりと握りしめる。




全ての悪意はクレアを連れ去った野盗に向けられた。






「ああ、“このお宝”は拾い物だった。こんな値打ち者、もう手放せねぇなぁ」



ジキルも剣を構え鋭い視線をサイファに向ける。




(なるほど、コイツはいかれてやがる)

サイファの言動からはヒシヒシとクレアへの執着が感じ取れる。


(同情するぜ、クレア)


クレアはサイファから一瞬も目を離さないで見つめている。





サイファがジキルの言葉に一瞬、ゾクッとするような美しい笑みを浮かべた、次の瞬間、






ガキィイン





剣のぶつかる硬音が響いた。


サイファが一瞬で飛び掛り間合いを詰めて攻撃を仕掛けた。






受けたのは、



ジキルの剣を奪い取ったクレアだった。



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