キョウアイ―狂愛―
「クレアァーーー」
激昂したサイファが再びクレアを剣で押した。
「逃がしたな!?
それほどあの男の命が惜しいか?」
クレアを攻め上げる瞳に余裕はなく、激しい嫉妬の炎が浮かび上がる。
対照的にクレアは冷めた瞳でサイファの重い剣を受け、
「どんな男だって、お前よりは好ましい」
フッと笑う。
この上無い侮辱。
「クレアァァアーー!!許さない、許さないぞ!!」
サイファの押し付ける剣に更に力が入り、マイメイは、サイファがクレアを殺めてしまうのではないかと危ぶんだ。
どちらも引かぬ対立で、決着がついたのは、クレアの踏みしめる土が崩れ落ちたから。
雨で地盤の弛んだ地表に圧力がかかり、崖の先が崩壊した。
次々と落ち行く土塊。
クレアは間一髪のところで崖の縁を掴んでいた。
「クレア…………ほら……」
それを確認したサイファは安堵の表情を浮かべクレアに手を差し出す。
クレアは手を差し伸べるサイファをじっと見つめ……、
「早く手を取れ」
懇願するように一心に手を伸ばすサイファに悲しく眉を歪め、手を払った。