キョウアイ―狂愛―
「女の意思など必要ない!
リドルの間に起きた問題はリドルで裁く。
即刻引き渡しを」
再度のサイファの強い要求をアルザスははね除けた。
「リドルの者といっても、介抱したのは我の部下。
女の意思を尊重するかどうかは我が決める。
クレアはリドル家に戻りたいとは一言も申してない」
まるで自分の立場をサイファに誇示するかのように。
それでも抑えてはいたサイファだが、瞬間、カッと頭に血がのぼった。
「あれは、俺のだ!」
―――誰のものでもない!他ならぬ俺の、俺だけのもの。
何故皆して邪魔だてをする?
―――若造ガ……
殺シテヤロウカ?
隠そうともしないサイファの殺気をアルザスはビリビリと感じていた。
冷や汗の噴き出すような鋭い敵意に気分が高揚していく。
「……そなたの人外の手にかかれば我など一たまりもない。
だが、忘れてもらっては困る。我はトルティアの領主。
我を惨殺したのが、リドル家の主で異形の化け物とあらば城の兵だけでなく、民とて黙ってはいないだろう」
むき出しの殺気を放つサイファにアルザスは落ち着いた声でそう言ってのけた。
両者の間に沈黙が流れる。