キョウアイ―狂愛―
サイファはクレアの後をゆっくりと追いながらも、落とした花を丁寧に拾ってゆく。
「来ないでったら!」
(捕まったらきっと連れ戻される。
また、乱暴に扱われる。)
恐怖し、必死に走るがドレスの長い裾が邪魔をする。
それでもサイファから逃れようと走っていると、
木の枝に長い髪が絡まってしまった。
「きゃっ」
グンッと後ろに引かれ悲鳴が漏れた。
焦って後ろを見ればサイファはすぐそこまで来ている。
一生懸命髪をほどこうとしたが、焦っているせいか更に絡まる始末。
いっそ引きちぎってしまおうか?
グイグイ引っ張るクレアに
「よせ」
追い付いたサイファの綺麗な指が伸びてきた。
「無理に引きちぎると髪が痛む」
「誰のせいでこうなったのよ!」
恨み事を言って睨みつけたクレアを見て、サイファは何故か楽しそうに笑みを浮かべた。
そして、ゆっくりと丁寧な仕草で絡まった髪をほどいていく。
それが大切なものであるかのように。
クレアはサイファのこれまでと違った様子に面食らってしまった。
しばらく見入っているうちに、
「ほら、とけたぞ」
静かにそう言うとサイファは髪をすいて撫でつけた。