キョウアイ―狂愛―




サイファはクレアの後をゆっくりと追いながらも、落とした花を丁寧に拾ってゆく。





「来ないでったら!」




(捕まったらきっと連れ戻される。

また、乱暴に扱われる。)

恐怖し、必死に走るがドレスの長い裾が邪魔をする。



それでもサイファから逃れようと走っていると、


木の枝に長い髪が絡まってしまった。



「きゃっ」



グンッと後ろに引かれ悲鳴が漏れた。


焦って後ろを見ればサイファはすぐそこまで来ている。



一生懸命髪をほどこうとしたが、焦っているせいか更に絡まる始末。


いっそ引きちぎってしまおうか?



グイグイ引っ張るクレアに




「よせ」



追い付いたサイファの綺麗な指が伸びてきた。





「無理に引きちぎると髪が痛む」




「誰のせいでこうなったのよ!」




恨み事を言って睨みつけたクレアを見て、サイファは何故か楽しそうに笑みを浮かべた。



そして、ゆっくりと丁寧な仕草で絡まった髪をほどいていく。


それが大切なものであるかのように。




クレアはサイファのこれまでと違った様子に面食らってしまった。


しばらく見入っているうちに、



「ほら、とけたぞ」



静かにそう言うとサイファは髪をすいて撫でつけた。


< 121 / 237 >

この作品をシェア

pagetop