キョウアイ―狂愛―
そして戸惑うクレアの腕に逃げている時、落とした花を一輪ずつやさしく乗せていく。
「昔からお前はそそっかしい……」
自分を見つめる優しいまなざし。
クレアは体が強張ったようにそこから動けなかった。
いぶかしむようにサイファを凝視してしまう。
しかし、サイファの態度はそこから一変した。
「俺から逃げるのは楽しかったか?クレア」
強い力でクレアの腕を掴み、ねじり上げた。
(……!?)
サイファが拾い、クレアの手に戻った花々は再度ハラハラと地面に落ちていった。
「いいね、お前は。
すがればいくらでも男が助けてくれる」
蔑むような目をクレアに向ける。
クレアは腕をねじられた痛みに顔をしかめながらもサイファを睨み付けた。
そうだ。この男はこういうヤツだ。
あたしを貶めるこの蔑んだ瞳こそがサイファ。
「ジキルをどうしたのよ?」
睨み付けながら低い声で問い詰めると、サイファはフンと鼻で笑った。
「都合よく出来てるな……お前の記憶は。
自分に都合の悪いことは、きれいさっぱり消去か」