キョウアイ―狂愛―
「双子の跡継ぎは厄(わざわい)を呼ぶ」
遠く異国は、ドロイトの国から戻ってきた祖父の妹、ラフランディには、マイメイが幼い頃からその話を繰り返し聞かされた。
「吸血種の血統に双生児が産まれた場合は、嬰児の内に一人を始末せにゃならん」
元来、長命で闘争心の強いヴァンパイアは多くは子を為さない。
内輪揉めの原因になるからだ。
元々数の少ないヴァンパイアの中で争いが起きれば、それは種の滅亡にも繋がりかねない。
それを防ぐ為に一族は厳しい戒律を敷く。
「ドロイトは良くない。
栄えとる国には誘惑もちらつく」
ドロイトのトルティアという街の吸血種は人の血を啜(すす)るという。
マイメイの暮らす小さな吸血種の一族は、草原を移動しながら生活する。
人の血は飲まない。
死した同族の血は貴重な糧(かて)として、一族の皆で新鮮な内に飲み干す。
後はヤギの血。
放牧している家畜のヤギを定期的に裁く。
血を飲み、肉を食らい、骨は道具に……余すことなく恩恵に預かる。
そんな自然と密接な暮らしをしてきた。