キョウアイ―狂愛―
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。大おばさん」
私にはこの限られた世界で堅実に生きていく道しかないのだから……。
マイメイは笑って見せたのだが、ラフランディの心配は現実のものとなってしまった。
それは、
リドルの大火事から20年後、マイメイが十の年のこと。
マイメイの一族は町に出向いた。
マイメイは普段着ないような正装に身を包み、初めて見る町の様子に目をキョロキョロさせていた。
小さな町で一番の、少し古ぼけた宿の待合室に現れたのは、
同じ一族とは思えない程、美しい男だった。
マイメイの暮らす小さな集団の粗野な男達とは全く違う。
マイメイが一目で心を奪われた男に、ラフランディ大おばは、畏怖しているようだった。
「サイファ……様」
ラフランディは震える声で男の名を呟いた。
男はそんなラフランディに優しい瞳を向けた。
「元気だった?ランディ」
それは美しい笑みで。
「サイファ様……お顔は……」
「すっかり治ったよ。20年も昔の事だ」
ラフランディは恐々と近づいたが男の顔に手を伸ばすと、
「おぉ……」
眉尻を下げ涙した。
男は変わらず微笑んでいる。