キョウアイ―狂愛―
姿の見えなくなるまで、門前に立ちクレアを見ていたサイファは、
包みを握りしめ、
高揚する心を抑えながら馬を走らせた。
――クレアが微笑みを向けた
他の誰でもなく
この 僕に
向けられる事はないと、諦めていた笑顔は、サイファの感覚を鈍らせ、
クレアに憎まれるのみの自分の行動を忘れてしまっていた。
マイメイだけがサイファの後ろで不信感を拭えないでいた。
桶の水が勢いよく流される。
(……汚い)
城に戻ったクレアは、嫌悪に顔を歪ませ、サイファに触れた手を何度も洗っていた。
しかし、収穫は十分にあった。
これなら自分につけいる隙はある、と、クレアは頭の隅で計画を巡らせた。