キョウアイ―狂愛―




しかし、クレアは、同じように美しい笑みを浮かべたままシアンに切りかかったサイファを、知っている。
自分を無理やり抱いたサイファを知っている。



そこには確かに狂気が満ちていた。



(この悪魔の本性を忘れてはならない)



毎夜、寝る時にロザリオを握り締めては、サイファへの復讐を誓う事を欠かさなかった。









「僕達の母親は、僕達を産んですぐに亡くなったから、僕はよく幼い頃、お前の面倒を見てあげていたよ」




中庭のベンチに座り、昔話を聞かされる事もあった。



「お前は物心つくのが遅く、ぼんやりした子供だった」



自分の知らない過去をサイファが話す。




「その髪だって、僕がいつも結ってあげていたんだ」




そういってサイファが自分の髪を撫でるのを、クレアはくすぐったい思いで見ていた。





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