キョウアイ―狂愛―








領主アルザスは、クレアを手放すつもりなど毛頭なかった。



クレアを餌にいつまでもリドル家の気を引いておくつもりだったからだ。






だが、このヴァンパイア騒ぎを前に少々考えを変える事になった。






リドル家の異形達とは厳しいルールを設け、取り引きしている為、街の人間にばれるようなへまはないはず。

よって只の噂に過ぎぬと言うのがアルザスの考えではあったが、
しかし、


実際のところ自分はヴァンパイアの温床、リドル家と取引があるのは確か。




ヴァンパイア騒ぎに乗じて、もし、リドル家の全てが化け物とばれたら……自分の地位も危ういのではなかろうか?



考えた末、

アルザスはリドル家としばらく距離を置くことにした。




その為、クレアを手放し、近頃城に頻繁に顔を出していたサイファに歯止めをかけることにした。




(女もいつまでも止め置ける訳でなし。

サイファとて、恩は感じても恨みはしないだろう)





案の定、許可をもらったサイファの顔はみるみる内に輝いていった。






< 159 / 237 >

この作品をシェア

pagetop