キョウアイ―狂愛―
「サイファ、待って…………」
クレアは小さく反抗を示した。
屋敷で一番上等な部屋。
柔らかいベッドの上。
力ないそれは妨げとしては何の効力も発揮せず、むしろサイファの焦りを助長する。
「もう待つのは嫌だ……」
切なく訴える瞳。
はだけた白いシャツのえりに滲む血は赤く鮮やかで、彼の美しさを一層際立たせた。
(汚してしまった)
クレアの胸がチクリと痛んだ。
「君は僕だけの物……だから待たない」
狂おしくそう囁くサイファの冷たい指がクレアの頬に触れる。
ゆっくりと美しい黒の瞳が近づき、形よい唇が優しくクレアの唇に押しつけられた。
それは微かに震えていて、緊張が伝わる。
――サイファを拒めない
間違った行為だと思いながら、クレアは強く否定出来なかった。
再び唇が重ねられ、微かに開いた口に、ゆっくりと深く舌が差し込まれた。
「ん……」
まるでそれをずっと求めていたかのように違和感はなく…………
そうしてクレアの葛藤は快感の渦の中にゆっくり溶けていった。