キョウアイ―狂愛―
クレアがリドルの屋敷に戻ってしばらくが過ぎていた。
時間はゆっくりと流れ
サイファは屋敷の者が驚く程、今までにないくらい穏やかで、
厳格で陰気な雰囲気を持っていた屋敷はにわかに明るさを放ち出した。
少し前までサイファの中に渦巻いていた暗い感情は全て消え、
クレアは幽閉される処か、屋敷の中を歩き回る自由に加え、常にサイファが連れ回っていた。
クレアが他の者と親しくするのを極端に嫌う他は、サイファはどこまでも優しく……
夕陽の沈む丘にも、その時間だけでなく何度も連れて行かれたし、
街を二人で歩いたり、商人を屋敷に呼んで贅沢に身の回りの物を揃えてもらった。
月夜の晩には、ベランダでお茶を飲んだ。
仲睦まじい二人の様子に屋敷の者も毒気を抜かれ、クレアにこれまで以上に忠誠をもって仕える者も増えた。
ただ、そんな日々の過ぎ行く中で、
クレアだけが日毎に元気をなくしていった。