キョウアイ―狂愛―





サイファやマイメイの気づかいには「大丈夫」と無理に微笑んで見せるクレアだったが、


誰の目にも不調はあきらかで

けれども、決して胸の内をさらけ出さずに一人思い悩んでいた。






サイファと楽しくあれば、シアンやジキル達の無念な思いが重くのし掛かり、


復讐心を抱けば、サイファを騙す罪悪感に苛まれた。







こんな事があった。




サイファが用事で屋敷を離れ、何もする事がなかったクレアは厨房を借りて料理をする事にした。



簡単なお菓子作りだ。


柔らかいふかふかの大きなケーキ。
マイメイ達にも分けて皆で食べよう。




クレアが厨房の隅でボールに割り入れた卵を混ぜている時だった。




いつの間にか戻っていたサイファが突然、厨房に入ってきた。




「君がそんな事する必要はない」


「時間が空いたから趣味でやっているのよ」



手首を捕まれ、ボールを落としそうになりながら慌てて説明した。



「怪我でもしたら大変だ」


(今まで散々危険な目に合わせておいて……)


呆れた目を向けたが、サイファはいたって真剣だった。





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