キョウアイ―狂愛―






「あたしの作ったお菓子、あなたにも食べて欲しいわ」


柔らかく言ってサイファを見上げると、その頬が微かに赤らむ。



数分後、料理人を全て厨房から追い出し、クレアは一人で広い厨房を占拠する事になり、申し訳ない思いをする羽目に。



その上


「クレア、今オーブンは熱いから触れちゃ駄目だ」


「粉を振るうのは疲れるだろ?僕が代わろう」


周りをサイファがうろうろした為、気が散ってせっかくのケーキも軽く焦げてしまい散々な結果に終わった。






「美味しい」



焦げたケーキを一口味わいサイファは極上の笑みをクレアに向けた。



普段出されるデザートに比べ遥かに見劣りするそれは、申し訳ないくらい立派な皿に盛り付けられサイファの前に大量に置かれている。



もちろんマイメイ達に出せる代物ではないが、かといってサイファに全て食べさせるのは更に問題だ。



そう思うのだが、


「サイファ、食べ過ぎ……よ?」

クレアや



「そ、そうです。サイファ様。そんな失敗作……いえ、食べ過ぎはお身体によくはありませんわ」

マイメイの制止を、



「うるさいよ?マイメイ。僕の食事の内容にいちいち意見するな」

振り切り、



「本当に、今までに食べた物の中で一番に美味しいよ」


サイファは一人嬉しそうにその後もケーキを口に運ぶのだった。




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