キョウアイ―狂愛―





また、こんな事もあった。




リドル家の庭はとても立派に整えられている。


計算された木や花壇の配置、豪華な噴水もあって、クレアは庭を散歩するのが好きだった。



毎日庭を歩いている内に、その素晴らしい庭を作っている庭師を知った。


リビドーという名の寡黙な長身の青年。




お互い顔を見かけて軽く挨拶する程度だったが、ある日、クレアが蜂に襲われかけた処をリビドーが助けた。




「ありがとう……」


「いえ、無事で何よりです。奥様」


「お、奥様!?」


「……何か変でしたか?」

「……あたしの名前はクレアです!」


(サイファと結婚した訳でも何でもないんだから……)



必死で否定するクレアに、

「では……クレア様、とお呼びします」



リビドーは気持ちを尊重してくれた。


クレアは『様』をつけられる事にも、まだ慣れないでいたがそれについては口をつぐむ事にした。





そしてそれをきっかけに二人は顔を合わせると少し長く話すようになった。





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