キョウアイ―狂愛―




数日後の食事の席での事だった。




「そういえば……」


サイファが徐に口を開く。



「クレア……君、最近友達ができたらしいね?」




何気ない口調で話しかけてきたのでクレアも普通に、

「友達?」


パンを摘まみながら聞き返した。




「そう……、あの腕のいい庭師」


サイファの声のトーンが低くなる。




不思議に思ったクレアが顔をあげると、ワインを口に含むサイファと視線が交わった。


タン


ワインのグラスをテーブルに置いたサイファは、にっこりと微笑む。



「良かったね」





いつかのように寒気を感じる笑顔だった。




そして次の瞬間、


テーブルに飾られた花瓶を思い切り手で払ったのだ。


派手な音を立て、床に落ちた花瓶は砕け散った。

中の水、花と花瓶の破片がその場に散らばる。





「まぁ、お二人共、お怪我はごさいませんか!?」


何事かと召使いが数人、食事の席に飛び込んできた。



「この花を育てた庭師を呼べ」




サイファは席を立ち落ち着いた声で使用人に命じた。





< 174 / 237 >

この作品をシェア

pagetop