キョウアイ―狂愛―
すると、その涙をそっと冷たい指がすくった。
天涯付きの大きなベッド、薄い絹のカーテンが幾重にも重なる中、宝石のように中央にうずくまって眠るクレア。
それを、ベッドの縁に腰掛けサイファは見下ろしていた。
―――変わらない―……三十年前と
かかる亜麻色の柔らかい髪をクシュとすいてその顔を覗き込む。
―――しかし、何故………
(冷たい……)
クレアは幸せな夢から覚醒した。
伏せた瞼(まぶた)をゆっくり持ち上げると自分を見下ろす黒髪の男と目が合う。
(……え?)
笑ってシアンを切り捨てた男。
けれどあれは夢の話で……
でも男がここにいるということは……
シアンの切られた夢―――
あれが現実?