キョウアイ―狂愛―
「そうだね……。忘れていたが、最初から俺達はこういう運命だった」
クレアを見下ろすサイファの瞳は空虚だった。
クレアの手にゆっくりと銃を握らせる。
「サイファ……」
クレアはまだ何か訴えようとしたが、サイファに激しく口を塞がれた。
「……持っておけばいい。
俺はお前に撃たれるような間抜けじゃあないし、何も変わりはしない」
サイファの瞳に激しい怒りが映る。
「同じ事だ」
自分に言い聞かせるようにサイファは低く囁いた。
「お前に慕われようが、恨まれようが、俺はお前なしではいられないんだから…………同じ事」
「……サイファ」
「ただ、俺を憎む程にお前が辛くなるだけだよ……クレア」
「…………あ」
先程の続きのようにサイファの手がクレアに触れる。
サイファの口振りはとても冷たかったが、クレアに触れる指はどこまでも優しく、慈しみが込められていて、
――…悲しかった。
「やはり君は俺を愛してはくれないんだね……」
瞼を閉じて耐えるクレアの頬に、上から何かがポタリと落ちてシーツに流れる。
クレアの目からも同じものが流れ落ちた。