キョウアイ―狂愛―
「ひっ……」
頬に置かれたサイファの手を振り払い立ち上がって壁に身を寄せる。
その様はサイファの心に黒い炎を灯した。
意地の悪い笑みを浮かべながら一歩ずつクレアを追い詰める。
「来ないで!」
必死の叫び虚しく、
サイファはギリ…とクレアの細い腕を壁に押し付ける。
意図の知れない男に恐怖しながらもクレアは敵意を隠さず睨み付けた。
「何故忘れた?……それ程憎かったのか?僕が……」
クレアの腕にギリギリと爪を食い込ませながら真顔で詰問する。
(何を言ってるのか……訳がわからない)
男の真意を探ろうと瞳を覗き込むが、その中には自分に対する憎しみしか浮かんでいない。
「あたしの事も殺すんでしょう!?」
(あんたはシアンも殺した!)
クレアの非難の叫びが響いた。