キョウアイ―狂愛―





「クレア様が生血をお召し上がりにならない?」


マイメイにその様子が伝わったのは半刻も過ぎた頃。


「何度お持ちしても要らないの一点張りで……」


召し使いの1人が困ったように頭を傾げた。





では、この30年、生血を口にせず生活してきたというのかしら?

マイメイはクレアの部屋へ急ぎ足で向かいながら不思議でならなかった。


例え記憶を無くされたのだとしても体の性質まで替えられる訳ではないのだし……。



―――このリドル家の色濃い血の業は抑えられまい。何千年も前から世を忍び引き継がれてきた習わし。



ましてや


クレア様に至っては正当なる後継者―――純血。





クレアに比べれば薄くはあるが、マイメイにも確実にその血は流れていた。


だからこそ、抑えられるものではないと理解できるのだ。





―――体内に流れるリドルの血が求めるのだ。

渇きは生血によってのみ潤う。


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