キョウアイ―狂愛―
二人きりになった部屋で、サイファは今一度、赤い液体に所々染まった室内を見渡した。
「……この生血は我ら一族の貴重な命の源」
壁に流れる液体を掬(すく)ってクレアに見せた。
「これを潤滑(じゅんかつ)に調達する為、僕は領主の飼い犬にさえなった」
「……浅ましい化け物ども…」
呟いたクレアの胸元に銀のロザリオ(十字架)が光る。
「お前が去った30年前から俺が一族を統(す)べてきたんだ!」
サイファは咎めるように言葉を放ち、
「あたしはあんた達とは違う!あんたなんて知らない!あんたと同じ血なんてあたしには流れてないわ!!」
クレアは全身全霊をかけ否定した。
(こんな血を飲んで生きる汚らわしい化け物の一族……あたしは違う!)
―――僕を……否定するな……!……クレア!!
サイファの目が悲しく歪んだような気がした。
そう感じた瞬間クレアは荒々しく腕を捕まれベッドに倒されていた。