キョウアイ―狂愛―
「……っう!」
生臭い血の臭いに顔を背けたが、もう片方の手で固定されてしまう。
冷たい指先が顎を掴む。親指がクレアの歯間に入り口をこじ開けた。
ドロリとぬめりを帯びた濃いものがクレアの口の中を侵食していく。
気色悪い感覚に吐き気を感じたが、
(……何故!?)
その血は微かに甘かった。
「美味いだろう?同族の血は」
目の前の美しい悪魔はクレアの動揺を見透かすように目を細めた。
(そんな訳ないっ!)
反論しようと口を開くと血が喉の奥へ入ってきた。
ゴクリ
自分の喉の音がやけに大きく響く。
それはまるで汗をかいた後飲む水のように喉を潤し、胃に染み渡った。
「かつては極上の血を求め同族殺しが絶えなかった……」
サイファの手の力が少し緩まる。