キョウアイ―狂愛―
クレアはその一瞬の隙に手を振り払い、顔を背け血を吐き出す。
そして口元の血を拭った。
「あんたのような悪魔と一緒にしないで!」
精一杯の虚勢で自分に股がる男を睨み付けた。
「悪魔じゃあない」
サイファは再びゆっくりとクレアにのし掛かった。
「僕等の呼称(こしょう)はヴァンパイアという」
その表情は平静を取り戻しているが、どこか恐ろしく……。
「闇に紛れ人の生き血をすすり、人に似て人ならざる魔性……呪われし一族」
クレアの瞳に一層不気味に映った。
「……僕等一族は人間のように交尾に執着がない」
サイファが艶やかに笑う。
―――突然何を……!?
クレアは背に寒いものを感じた。
「どきなさいっ!」
さっきから体勢を変えようとしない男に違和感を覚える。