キョウアイ―狂愛―




馬を走らせる事、数刻


町外れの森近くまでくると男は本性を表した。



「ここでいいわ……ありがとう」


すぐさま消えようとするクレアの腕を掴んだ。




「おいおい、それはないだろう?ここまで案内させておいて……」




(自分から付いてきたじゃない)

やはりというか、クレアの悪い予感は当たった。



「離して……!」


腕を引くも敵わず、草の上に押し倒される。




「一度、味わってみたかったんだよな……高潔な生血ってヤツを……」


舌なめずりをする男。
狙いはクレアに流れる純血の血。



同族間での血を巡る争いには厳しい処罰が下る。


いつも飲んでいるのは、定期的に提供される人間の血。



遠い昔に口にした同族の血が忘れられない……!





男はクレアを押さえつけ、
その白いうなじに、



大きく開いた口から見える尖った牙を突き立てた。



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