キョウアイ―狂愛―




ビクン


鋭い牙の感触にクレアの体か跳ねた。



ジュルジュルと嫌な音を立て男はクレアの血を飲んでいる。





不思議と痛みは感じない。ただ、牙の当たるうなじの部分が熱く、脈動が激しい。


クレアは仰向けで固まり、瞳孔は大きく開いている。





―――……夜目モ利カヌ末端デモ、血ヲ欲スルカ






再び頭に響く声を聞いた。




―――シテ、コノ愚カナ男ヲドウシテクレヨウ……




声は迷っているようだった。




―――浅マシキ男ナレド我ガ同胞………シカシ、コノママ委ネテイテハ………




声と共にクレアの顔つきが変化していく。


瞳は黒目がキュッと小さくなり強い輝きを放つ。
まるで猫の目のように。

開いた口の中では男と同じような牙がメキメキと伸び出した。






男はクレアの血に夢中で、

クレアは変化をしている途中だった。




ザン



音がして、男の背に剣が突き立てられた。



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