キョウアイ―狂愛―
「それに、まだお前の名前も知らねぇんだけど?」
「あ、ごめんなさい。あたしは、クレア…です」
「クレア……」
ジキルは確かめるように名前を呟き、
「大分様子が違うが、オレはお前を預かったんだ。クレアはオレのもんだ。
つまり勝手にどこか行くのは禁止っつーワケ!」
そう高らかに宣言した。
「そ、そんな……」
また、ここでも囚われの身なのだろうか?
やっとあの冷酷なヴァンパイアの屋敷を逃れたと思ったら……今度は、盗賊!?
(男なんて……シアン以外は……みんな同じよ。大嫌い)
恨みがましい目でにらみつつも、
クレアは目の前でニッと笑い、
「ちゃ〜んと守ってやっからな?クレア」
自分の頭をガシガシなでまわす男を、どうしても心の底から嫌いになれそうになかった。