キョウアイ―狂愛―
「話し合ったって……」
突然の事実に戸惑う。
「あ、あー…お前が寝てる時、出てくるんだ」
ジキルは焦った様子でパンをかじりスープで流し込む。
クレアはそんなジキルの様子を見てますます不安に陥った。
(記憶のない自分とジキルはどんな事を話し、何をしてるんだろう)
それにしても――やはり自分の中には、もう一人の誰かがいるらしい……。
「……でな、クレア……聞いてっか?
お〜い?」
呼び掛けにハッと覚醒するクレア。
「でな……、お前がノコノコと元いた村に戻るとすると、お前を追ってる輩だってバカじゃねぇんだ。そこだって捜索範囲に入ってるだろうよ?」
「だから、子分を偵察に行かせる」と、ジキルは説明した。
クレアもそれは分かっていた。
サイファの自分に対する執着は尋常じゃない。
マイメイの話を信じるならば、30年の間、探し回っていたという。
それなら今回だって、ちょっとやそっとじゃ諦めるはずもない。
ありとあらゆる場を探し回っているに違いない。