この思いを君に
「なぁ、呼んでるぞ。」
絵本を鞄にしまっていると、多野がドアの方を差して言ってきた。
ドアの方を見ると、見たことのある男の子。
「えっと…どうしたの?」
あ、思い出した。去年優くんと同じクラスだった、堀くんだ。
「あのさ、優と付き合ってないってほんと?」
中学生くらいからだろうか、“優と付き合ってる?”と聞かれる事が多くなった。
「うん、付き合ってないよ。」
ほんとの事だ。こう言うしかない。
ほんとは“付き合ってる”と言いたいのに、“好き”の一言が言えないの。
「じゃあさ、一緒に帰らない?2人で。」
人懐っこい笑顔で言うから、もう1つ思い出した。
堀くんはハーフっぽい顔立ちで結構モテるんだ。
「俺とじゃ嫌?」
「あ、ううん、ちょっとびっくりして。いいよ帰ろう!」
切なそうな顔で言うから、思わず言ってしまった。
「じゃあ放課後迎えに来るね。」
優くんはどう思うだろう…。
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