甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「だから、噂の市川さんが来るかもって」
「なんでだよ。委員会もう終わったんだろ?」
「さっき、委員会が終わった時にちょっと頼みごとしたから。
保健だよりみたいなのを前任の先生が作ってたみたいだから、その資料集め。
ちゃんと引き継ぎしてくんないんだもん。まいっちゃうよ」
ため息をつきながら言う瞬の視線の先を覗く。
パソコンの液晶画面にはエクセルの画面が開かれていて、一行目には『保健だより』の文字。
縦書きっていうのにも少し驚いたけど、それ以上に……。
「エクセル? ワードじゃなくて?」
「だってエクセルのが楽なんだよ。俺、ワードって使えないし」
そう言いながら、ブラインドタッチも出来ない瞬に呆れてため息を落とそうとした時。
保健室のドアが、小さくノックされた。