甘い魔法②―先生とあたしの恋―
それを見送った市川と瞬が、階段を上がる俺の後ろついてくる形になった。
授業が終わって一時間経った校舎には、吹奏楽部の演奏だけが響いていてひっそりとしている。
階段の踊り場にある高い位置の窓からは、夕日の光が差し込んでいた。
いつもは落ち着くハズの夕日のオレンジ色。
だけど、三人でいる事にはどうしても違和感が残って、妙に落ち着かない。
「市川さんって意地っ張りなんだって? さっきハル兄に聞いたよ」
瞬が出した話題に、背中に突き刺さる市川の視線が痛い。
聞こえない振りをして階段を上がっていると、少し間を空けた後、市川が答えた。
「みたいですね。よく幼なじみにも友達にも言われるし。
心配させたくないから言わないだけなんですけど」
「へー。でもさ、心配するしないは相手の勝手だし、とりあえず誰にでもいいからぶちまけちゃえばいいのに。
その方がすっきりするよ」
瞬が明るく返すと、市川はまた黙る。