甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「馬場先生は、俺じゃなくて矢野先生の方がいいみたいですけど」
「え、いえ、そんなつもりじゃっ……」
馬場先生は慌てて否定したけど……真っ赤に染まった顔は、瞬の言葉を肯定しかしていない。
それを面白がった瞬は、「いいんですよ、素直に言ってください」なんて馬場先生をからかい始める。
「生徒も噂してますよ。馬場先生は矢野先生がお気に入りだって。ね、市川さん」
「え……あ、……はい。そういう噂もちょっとだけ……」
「ほらね。馬場先生の態度分かりやすいですもん」
「えっ、そんな事……」
瞬が馬場先生をからかうのを耳で聞きながら、後ろにいる市川の表情を盗み見る。
「……――― 」
俺の目に映ったのは、きゅっと口を結んで目を伏せている市川の姿。
下ろしたままの両手は、それぞれぎゅっと握り締められていた。
何かを堪えてるように見える市川の表情に、俺はゆっくりと視線を戻した。