甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「坂口先生、私が車出しますよ。
というか、よければ私が付き添いますよ。もう仕事も終わりましたし、帰りがてら。
もちろん、私みたいな素人でも構わないんだったら、ですけど」
名乗り出た高遠に、瞬はにこっと笑って答える。
「全然問題ないですよ。医者がきちんと診てくれますから。
馬場先生を病院にエスコートしてもらえれば、それで大丈夫です」
「じゃあ、馬場先生、行きましょうか」
「……はい」
「立てますか? よければつかまって下さい」
「はい……すみません」
馬場先生は、高遠の肩につかまりながら階段を下りていく。
足を庇ってるせいで、少し歩き方がおかしいけど、あの程度なら大丈夫だろ。
瞬の判断通り捻挫で済みそうだし。
馬場先生の後ろ姿を見送ってから、市川を振り返る。
表情は少しほっとしたようにも見えたけど、落ち込んでいる雰囲気は変わらない。
だけど、市川は俺の視線の先ですぐに笑顔を作った。