甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「坂口先生、コンピューター室行くなら二階だから下りないと」
「ああ、そっか。騒ぎで上がりすぎちゃったね。
ハル兄も二階の校長室だろ?」
「……ああ」
無理矢理切り変えたような市川の態度が気になりつつも、瞬の手前、素直に頷いて二階に下りる。
そのまま中校舎の廊下を歩く俺の後ろで、市川と瞬は渡り廊下を渡って北校舎へと歩いていった。
一度振り返っても、市川が振り返る事はなくて。
市川の凛とした後ろ姿をしばらく見つめていた。
隠そうとしてる漆黒の感情が、俺の中でうごめく。
ため息では逃がしきれない、鉛みたいに重い感情。
じょじょに身体の中に蓄積されていくそれは、俺を中から蝕んでいくようで。
気持ちが悪くて仕方ない。