甘い魔法②―先生とあたしの恋―
呆れ笑いを零しながら階段を上がるあたしに、先生は何も言わなかった。
静かな先生の後ろ姿を見ていると、小さな不安が募っていく。
……今、何を考えてるんだろう。
何か、言葉を呑み込んだりしてる……?
そんな事を考えて、唇を噛み締めてから先生の背中に話しかける。
今まで言った事のないような言葉を。
「先生……」
「ん?」
「先生の部屋、入ってもいい……?」
言い終わると、すぐに驚いた顔をした先生が振り向くから、顔が熱くなる。
その顔を少しだけ俯かせて黙っていると、先生が小さく笑みを零したのが聞こえた。
「それ、誘ってんの?」
「……っ、違うっ……違くてっ、……その、あまり二人きりで話してないから……話したいなって思って」
顔は真っ赤だし、言葉も途切れ途切れなのに。
先生は満足そうに笑う。
そんな先生の笑顔を見たのが久しぶりに感じて……、あたしはじっとその笑顔を見つめた。