甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「まさか。俺としてはもっと言って欲しいし」
「……先生でも、何も言われないのは不安になるの? 想われてないんじゃないか、とか思う?」
「なるに決まってんだろ。……つぅか、むしろ俺は市川よりもすぐに不安に駆られるタイプだと思うけど。
不安に駆られて……、自分を失うタイプ」
何か違う感情を含んだような答えに聞こえたけど……そのまま黙って先生の胸に顔をつけていた。
『自分を失うタイプ』、その言葉が頭に引っかかると同時に、あたしは今までの自分の態度を少し反省する。
可愛げがないのは性格上仕方ないにしても、もう少し気持ちを態度に出してもよかったのかもしれない。
っていうよりも、出さなくちゃいけなかったのかもしれない。
『バレたら』
そんな事ばかり気をつけて、先生に対しては他の先生よりも淡白に接してた。
意識して冷たく接してた。
あたしの気持ちが誰にもバレないように。
学校ではそれでよくても……、寮の中では、せめてもっと―――……。
「……分かった。じゃあ、年に何回かは言うようにする」
あたしの言葉に先生は笑みを吐き出す。
耳の辺りにかかる先生の吐息が少しくすぐったい。