甘い魔法②―先生とあたしの恋―
指令の書かれた紙が置いてある場所は応援席のすぐ近く。
マイクを持った実況役の生徒が、一人一人の指令を校庭中に響かせていた。
『青組、教師の腕時計! 黄色組、ピンクの花柄タオル! 緑組、27センチの靴! 赤組……』
つまり、諒子への指令は教師の腕時計。
あたしが見ている先で、諒子はコース脇にいた先生を連れ出すとそのまま一緒に走り出した。
「時計だけでいいんだろっ?!」なんて言う先生をずるずる引きずる諒子が一番でゴールして、実況係りに先生の腕を見せる。
『確かに教師の腕時計ですね。……矢野セン、これ、もしかして彼女とおそろいとかですかー?』
調子に乗った実況係りに、先生は苦笑いを浮かべただけだったけど、そこに諒子が割り込む。
『腕時計は知らないけど、指輪はおそろいだよね。しかも矢野センすっごいメロメロで……いたい!』
『教師のプライベートべらべらしゃべるな』
『って事は本当なんですねー。彼女って何歳なんですかー?』
『もーいいからレース実況に戻れって。ほら、他のやつもとっくにゴールしてるし』