甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「口止め料。他の子には内緒ね」
手のひらに落とされたのは、ミント味の飴。
「応援しすぎて喉からさないようにね」
付け足された言葉に、笑顔を返した。
グランドに戻ってから、諒子と一緒に青組の応援に回った。
先生は、他の生徒と話したり、レースに気を配ったり、結構忙しそうにしていて。
それを遠くから眺めていた。
秋穂ちゃんも、坂口先生も、本当に先生が好きなんだ。
施設にいる里子さんも……きっと、校長も。
色んな人の感情が先生に交差していて……なんだか先生が遠く見えた。
先生と付き合えるようになって、一番近くにいけた気がしてた。
だけど、そんなのあたしのうぬぼれだ。
先生は今だって、一人で闘ってるんだ。
坂口先生も秋穂ちゃんも、里子さんも校長も……そして、あたしも入れないドアの向こうで。
……自分の過去と。