甘い魔法②―先生とあたしの恋―
……だけど。
喜んでばかりいられない教室の雰囲気を感じて、ふぅっとため息を落とした。
なんだかんだ悩んでいたって、時間はいつも通りの速度で進んでいくからそれに焦る。
加えて周りの受験モードが、あたしの焦りを後押しする。
希望校は、もう一応決まっていた。
一学期から進路希望調査なんかあったりするから、悩みながらもなんとか決めて。
うちの学校からは推薦枠がある大学だから、それも狙ってるんだけど。
今月初めの二者面談では、今の成績なら指定校推薦の枠に入れるって聞いたし。
それなら面接だけで済むから、早ければ11月中には結果が出る。
ここまで決まっていてもどこかに不安が残るのは……お金の事も多少はあるけど、でも。
一番の不安は、あの寮を出る事なのかもしれない。
もう半年後に迫った卒業。
その時、あの寮も出なくちゃならない。
先生と、別々に暮らすようになる。
それを思うと、不安ばかりが頭に浮かんだ。
「あの寮、出なくちゃになるんだよね……」
思わずそう零すと、諒子が落ち着いたトーンで返事をする。