甘い魔法②―先生とあたしの恋―


だけど……あたしに、先生の気持ちを理解してあげられる時なんてくるのかな。

なんだかんだ言ったって、結局あたしには家族がいて守られてる。

将来への選択肢だってある。

お金の事だって、『気にする必要なんかない』って言ってもらえる。


そんなあたしに分かってあげられるのかな……。


秋穂ちゃんに言われた言葉だとか、坂口先生があの時言おうとした言葉が頭に浮かぶ。


『ここで育った人の事は、同じような経験をした人じゃなきゃ理解できないし、救えない』

『市川さんは、なんだかんだ言っても大切に育てられたって事だね。
だからそんな風に考えられるんだよ。なんていうか、考えが……』


坂口先生が続けようとした言葉は、きっと『甘い』だとかそういう事。

それを先生が止めたのは、図星をつかれたあたしが傷つくと思ったからなのかな。


なんだかやけにマイナス思考になっていて、これじゃダメだと首をぶんぶんと振った時、にたーっと笑った諒子が耳元でこそっと言った。



< 163 / 458 >

この作品をシェア

pagetop