甘い魔法②―先生とあたしの恋―
だけど……あたしに、先生の気持ちを理解してあげられる時なんてくるのかな。
なんだかんだ言ったって、結局あたしには家族がいて守られてる。
将来への選択肢だってある。
お金の事だって、『気にする必要なんかない』って言ってもらえる。
そんなあたしに分かってあげられるのかな……。
秋穂ちゃんに言われた言葉だとか、坂口先生があの時言おうとした言葉が頭に浮かぶ。
『ここで育った人の事は、同じような経験をした人じゃなきゃ理解できないし、救えない』
『市川さんは、なんだかんだ言っても大切に育てられたって事だね。
だからそんな風に考えられるんだよ。なんていうか、考えが……』
坂口先生が続けようとした言葉は、きっと『甘い』だとかそういう事。
それを先生が止めたのは、図星をつかれたあたしが傷つくと思ったからなのかな。
なんだかやけにマイナス思考になっていて、これじゃダメだと首をぶんぶんと振った時、にたーっと笑った諒子が耳元でこそっと言った。