甘い魔法②―先生とあたしの恋―
執着
「あれ……」
9月の3週目。
放課後、クラスの出席簿を保健室に持っていくと、保健室前で二年の男子と鉢合わせになった。
その顔に見覚えはあるのに、名前が思い出せなくて焦りながら記憶を辿る。
少し前、保健だよりのファイル運びを手伝ってくれた男の子だけど……。
その時が初対面だったし、名前までは覚えてなくて。
曖昧に笑うと、その男子は憎めない笑顔を向けた。
「あ、市川先輩」
呼ばれた名前。
ますます思い出さなくちゃって思いが強まる。
だけど、結局思い出せなくて、申し訳なくなりながらも質問を声にした。
「あの……ごめんなさい。名前が思い出せなくて……」
そんな失礼な事を言ったのに、その男子は笑顔を崩さずに答える。