甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「あれ、市川さん……に、そこの男子は誰だっけ」
入ってきた坂口先生に、岡田くんはまた笑顔で答える。
「岡田です。……俺、一日に二度も自己紹介したの初めてかも。
しかも初対面じゃないのに」
付け足された言葉に思わず笑うと、岡田くんの視線があたしに向けられる。
「あれ? 俺、なんかおかしい事言いました?」
「ううん。大丈夫。
あ、坂口先生いなかったから、勝手に消毒液と絆創膏使っちゃいましたけど……」
椅子に座った坂口先生に言うと、坂口先生は爽やかな笑顔を向けた。
「ああ、全然。なに、ケガ?」
「なんかサッカーで転んだみたいで。出席簿持ってきたらたまたまばったり……」
「そうなんだ。ごめんね。数学学習室行ってた」
「そうなんですか」
また先生に会いに行ってたんだ。なんて思いながらも、それを表情には出さずに答える。
坂口先生は、先生の事も、あたしと先生が同居してる事も知ってるだけに、なんとなく余計に警戒心が働いてしまう。
いつもヘラヘラしてるイメージがあるから、そんなに勘がいいとも思わないけど……。
なんとなく。