甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「岡田だっけ。手当て終わったんなら出てっていいよー」

「……いなかったくせにすぐ追い出すって、なんか感じ悪いっすー」

「だって俺これから仕事があるし、岡田騒がしそうだし、いられると邪魔だし」

「……ここきてまだ一言二言しかしゃべってないんですけど」


岡田くんは、苦笑いを浮かべながらも否定はしないで立ち上がる。

確かに賑やかな雰囲気を持つ岡田くん。

濁りのない明るい雰囲気は、親しみやすくもあるけど。


「市川先輩、コレ、ありがとうございました」


ドアのところで振り返った岡田くんに笑顔を返してから、出した消毒液を元の棚にしまう。

後片付けが終わって、あたしも部屋を出ようとしたところで、坂口先生に声を掛けられた。


「市川さんって、彼氏いるの?」

「え……?」


突拍子もない質問に、びっくりして振り返る。

椅子に座ったままの坂口先生は、微笑みを浮かべながらも、いつもとは少し違った雰囲気であたしを見ていた。

……まるで、観察するみたいに。


その目に動揺する気持ちを隠しながら、首を横に振った。



< 170 / 458 >

この作品をシェア

pagetop