甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「……いないです」


いるって言った時、それが誰って聞き返されるのが嫌でそう答えた。

偽者の彼氏を想像上で作って、嘘のデート話だとかをするよりは、いないって一言で片付けた方が楽だと思ったから。


じっと見てくる坂口先生に視線を返していると、あたしが負けじと見つめている先で坂口先生の表情が変わる。

さっきまでのおかしな雰囲気ではなく、いつもの軽い雰囲気に戻る。


「そっかー。いや、今時の女子高生は進んでるから、みんな彼氏いるのかなーって思って」

「……そうでもないですよ。半々くらいだと思いますけど」

「ハル兄が高校の頃はさー、いっつも違う女連れてたから。ついそのイメージがあって。

あ、聞いた事ある? ハル兄の学生時代の恋愛話」

「……いえ」


本当は里子さんから聞いたけど。


悪気なく話す坂口先生に、笑顔を作りながら話の続きを聞く。

……本当はあまり聞きたくないんだけど。



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