甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「なんかハル兄って誰にも執着しないタイプだったからさー、来る者拒まず去る者追わず的なスタンスでさー。
その淡白さに彼女の方が耐え切れなくて、それで別れるってパターンがほとんどだったみたいだけど」
「そうなんですか……」
「でもねー……ハル兄って今まで本気になった女がいないだけで、もし、本気になったら絶対に執着するタイプだと思うんだよねー。
だから、今の彼女には相当執着してるんだと思うな」
「……なんでそう思うんですか?」
軽く聞き流すつもりだったのに、思わず疑問が言葉になった。
それは、あたし自身感じてた事だったからなのかもしれない。
執着するタイプだって。
坂口先生は、回転椅子に背中を預けながら天井を見上げる。
「こないだも言ったけど、一度母親に置き去りにされてるから。
母親に、しかもあんなガキの頃置いていかれて、しかも離れていく後ろ姿まで見せられて。
そんなの、トラウマにならない方がおかしいじゃん」
「先生の中には……まだ、お母さんの後ろ姿が残ってるんでしょうか」