甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「ああ。なんか就任してからちゃんと話す機会がなかったからって、無理矢理。
まさか市川がやきもち焼いてるなんて思わなかったけど」
口の端を吊り上げて意地悪に笑う先生に、反論しようとして……そのまま口を閉じた。
何を言っても無駄な抵抗に終わるどころか、もっと追い詰められそうだし。
「とにかく、目立つとまずいから……」
「ここにいなければいいんだろ?」
「え、うん。……けど、2人で出かけるなんて無理……」
「事情があれば大丈夫だろ。行き先もちゃんとした場所だし」
「行き先?」
春の暖かい日差しが注ぐ中、先生が小さなため息をつく。
言いにくい事なのか、先生は空を見つめたまましばらく黙ってから、少し不安そうな視線をあたしに向けた。
「施設。
……俺が育った場所」
告げられた行き先に、驚きが隠せなかった。