甘い魔法②―先生とあたしの恋―
『こないだ……、市川さんを連れてきた時。ハルくん、怖がってたもん。
市川さんがあたしに傷つけられて、自分から離れるんじゃないかって思ってたんでしょ?
ハルくんが嫌だったのは、市川さんが傷つけられる事じゃない。
それが原因で自分から離れていくのが嫌だから、だから市川さんを守ってるんだよ。
誰よりも自分を守ってくれるハズだったお母さんに裏切られて……、そんなすぐに誰かを信じられるわけないもん。
ハルくんは、市川さんが大切かもしれないけど……どこかで信じてない。
だから、怖がってる……』
一方的に吹き込まれてる留守電。
耳に聞こえてくる秋穂の言葉が、俺の気力も表情も静かに奪っていく。
必死で立て直している俺を、暗闇に引き戻していくようだった。