甘い魔法②―先生とあたしの恋―



「あ、ハル兄」


気分転換に校内を歩いていると、前から歩いてきた瞬に声を掛けられた。


あまり見たくなかった顔。

ため息をつきながら、眉を潜める。


「校内ではその呼び方よせよ」

「じゃあ、矢野先生。

あのさ、秋穂が電話したのに繋がらなかったって言ってきてさー。

留守電入れたって言ってたから、聞いてかけ直してやってよ」


聞きたくない名前と話の内容を思い出させられて、気分が落ち込む。

顔をしかめる気力すら沸かない。


「留守電なら聞いた。……けど、かけ直すような用件じゃなかったし、いいだろ」

「冷たいなー、矢野先生。

電話してきたって事は、用件もあるけど、声が聞きたかったからじゃないの?

意地っ張りな秋穂が掛けてくるって事はよっぽど話したかったんだよ、きっと」

「……時間が空いたらかけとくから」


引き下がりそうもない瞬に適当な返事をする。

かけ直す気なんてこれっぽっちもなかったけど、これ以上この話題を続けるのも頭が痛い。



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