甘い魔法②―先生とあたしの恋―
瞬を通り過ぎながら言うと、瞬は予想通り俺の隣を歩き出す。
「おまえ、どこ行く気だよ。今こっちから来ただろ」
「矢野先生に会いに行こうと思ってたんだよ」
「……ブラコンが」
「秋穂ほどじゃないけどね」
秋穂の名前を出されても無反応でいると、瞬はため息をついて一人で話し出す。
すれ違っていく生徒達がチラチラ視線を向けてくるけど、それも気にならないみたいだった。
「秋穂、高校あまり上手くいってないらしいんだよね。
あいつ、素直じゃないところあるしさー。本当はいい子なのに。
相談に乗ってやりたくても、なかなか心開いてくれないし。
秋穂は、やっぱりハル兄じゃなきゃダメなんかなぁ」
「……別に俺にだって悩みだとかを打ち明けてきた事なんかないけど」
「でも、秋穂はハル兄と一緒にいるだけで満足みたいだったし。
悩みなんか聞いてもらわなくたって、一緒にいるだけでよかったんだよ、きっと」
「もし、本当にそうだったとしても、だからってずっと一緒にいる訳にはいかないんだから仕方ないだろ。
あいつはあいつでなんとかやっていくしかねぇんだから」