甘い魔法②―先生とあたしの恋―
【第一章】

心の奥に潜むモノ



【矢野SIDE】


「……今、生徒って言ったか?

言ってないよな? 間違えても言ってないよな?」

「言った」

「……最近、どうも耳がおかしくてな。やっぱり歳……」

「いや、生徒って言ったけど?

俺、3年の市川って生徒と付き合ってんだって」

「……ハルキ」

「つぅかさ、少し前に本気になった女がいるって相談したら『何が何でも手に入れろ』っつったの昌じぃ……っと、校長じゃん」

「2人の時くらいは昌じぃでいい。

大体、おまえに校長なんて呼ばれると虫酸が走る」

「じゃ、昌じぃ」


にっと片頬を上げて笑うと、昌じぃもそれにつられて微笑む。

でも、すぐにそれを壊して慌てて口を開いた。


「いや、マズいだろ!! 生徒と付き合う教師がどこにいるんだっ!!

バレた時処分を下されるのはおまえだ。

分かってるのか?!」


21時の薄暗いこじゃれたバーに、昌じぃの大きな声が響く。


間接照明に照らされる広い店内は、十数人の客がポツポツと席を埋めていた。

離れた場所にいる客からも集めてしまった視線を気にする訳でもなく、俺はくっくっと喉の奥で笑う。







< 2 / 458 >

この作品をシェア

pagetop